後半です。各病原体をどこまで想定すればよいかについて書かれてます(かなり意訳ですけど)。
Q11:どのような患者にMRSAカバーが必要か
過去12ヶ月間にMRSA培養陽性またはMRSA感染の既往があり場合に開始すべき
MRSA感染症の危険因子としては、抗生物質の使用歴、最近の入院、血液透析、創傷ケアなどが報告されているが、その地域のMRSA検出率が低いのであれば、これらをもって経験的な抗MRSA治療を行う必要はない。 一方、こうした因子を複数持つ患者はMRSAによる肺炎の可能性が高いかもしれない。経験的治療としてはバンコマイシンまたはリネゾリド が第一選択である。(MRSAの検出率が高い地域ではICU入院を必要とする患者では経験的に抗MRSA薬の使用を開始するパネルメンバーもいた。) MRSAの鼻腔PCRが陰性であること、グラム染色でクラスター状のグラム陽性球菌が存在しないこと、MRSAの呼吸器系培養が陰性であることは、抗MRSA薬のDe-escalationの根拠として使用できる。
Q12:どのような患者において、緑膿菌を含む耐性グラム陰性桿菌のカバーを考慮すべきか
過去12ヵ月間に耐性グラム陰性桿菌の培養または感染歴がある場合、広域抗菌薬投与を受けた入院歴がある場合、気管切開、好中球減少症、または肺疾患の併存歴がある場合には、緑膿菌を含む耐性グラム陰性桿菌を対象とすべき。
これらのリスクを有する免疫不全患者に対しては抗緑膿菌活性を有するβラクタム系抗菌薬を使用すべき(だが、肺炎球菌への活性が不十分なため、セフタジジムは単剤で使用すべきではない)。
Q13:どのような患者に多剤耐性グラム陰性桿菌による感染の可能性をカバーする経験的治療を考慮すべきか
最近の多剤耐性グラム陰性桿菌の培養または感染歴がある場合、経験的治療としてカバーすべきである。
セフタジジム-アビバクタム、セフトロザン-タゾバクタム、またはメロペネム-バボルバクタム、あるいは従来のβラクタム薬にコリスチンの追加を考慮 微生物学的検査を行い、適切にDe-escalationすべきである。
Q14:どのような免疫不全患者においてPCPを考慮すべきか
びまん性、両側性の間質性陰影やalveolar opacitiesを有し、PCP予防を受けていない患者で
(1)新たに診断されたか、抗レトロウイルス治療を受けていないか、CD4+<200cells/µL(or <14%)のHIV患者、または
(2) 細胞性免疫が著しく低下した非HIV/AIDS患者(グルココルチコイドや抗サイトカイン治療)に対して治療を検討すべき。
治療はST合剤(PaO2<70mmHg and/or AaDO2≧35mmHgのとき、HIV患者ではステロイド併用)
Q15:いつアスペルギルスのカバーを行うべきか
腫瘍や抗癌剤により重症で長期化した好中球減少状態、およびhalo サインや空洞を伴った結節影を有する場合に糸状菌のカバーを考慮する。
ボリコナゾールは侵襲性アスペルギルス症の第一選択薬だが、これらの患者はムーコルなどボリコナゾール耐性真菌のリスクも有しているため、経験的治療としてはリポソーム化アムホテリシンBの投与を推奨している。 (不耐の場合はイサブコナゾールを用いた経験的治療が行われる) 抗TNF-α阻害薬を使用中の患者に糸状菌感染を疑う肺炎が発生した場合には抗TNF-α阻害薬を中止することが重要である。
Q16:いつムーコルをカバーするか
対象はアスペルギルスを疑う所見とほとんど同様。特にボリコナゾールによる予防内服を受けている患者で真菌感染が疑われる場合に重要である。
Q17:ノカルジアのカバーは?
心臓、肺、肝臓、造血幹細胞移植をうけた患者で肺炎があり、肺膿瘍や脳膿瘍の所見を有し、ST合剤による予防を受けていない患者ではノカルジア感染の可能性も含めて治療すべきである。
治療はST合剤を用い、禁忌の場合にはリネゾリド を用いる。既にノカルジアに効果のある抗菌薬(リネゾリド やイミペネム)が使用されている場合、追加は不要であるが、ST合剤は標的治療として選択されるべきである。
Q18:VZVによる肺炎の可能性は?
水疱性発疹を有する両側網状・結節性陰影所見の患者において考慮する。 (アシクロビル点滴)
Q19:CMVによる肺炎の可能性は? 最近の肺移植や造血幹細胞移植後の両側間質性陰影の患者において、治療を行うことを提案する。
治療はガンシクロビルを用いる。肺移植レシピエントにおいて、BAL中のCMV-PCR定量は血漿よりも有用である。
Q20:結核による肺炎の可能性を考え治療すべきか?
経験的治療として抗結核薬を使用すべきでない。例外は最近の結核暴露歴を有するHIV感染症患者で、結核感染に矛盾しない臨床所見があり、かつ重症である場合のみ。
Q21:寄生虫感染を考慮して経験的治療をすべきか
経験的治療には含めるべきでない。