結核の自然史
2020年 08月 18日
【方法】化学療法が行われるより前の時代の研究を対象としたシステマティックレビューで確認された報告を検討し、経時的な死亡率に関する詳細なデータを抽出した。ベイズ的枠組みを用いて、結核による死亡率と自己治癒率を推定した。推定値がコホートによって異なるように階層モデルを採用した。推定は塗抹陽性結核(SP-TB)と塗抹陰性結核(SN-TB)に分けて行った。
【結果】SP-TB患者41コホートおよび肺SN-TB患者19コホートを解析対象とした。結核特異的死亡率の中央値は、SP-TB患者で0.389/年(95%CI; 0.335-0.449)、SN-TB患者で0.025/年(0.017-0.035)であった。自己回復率の推定値は、SP-TBおよびSN-TB患者でそれぞれ0.231/年(0.177-0.288)および0.130/年(0.073-0.209)であった。これらは、結核に関連しない死亡率を0.014/年(平均余命70年)と仮定すると、SP-TBでは1.57年(1.37-1.81)、SN-TBでは5.35年(3.42-8.23)の平均未治療期間に相当する。
【結語】結核特異的死亡率は、SN-TB患者よりもSP-TB患者の方が約15倍高い。以前の結核モデリング研究ではこの差は劇的に過小評価されており、関連する予測の精度に懸念が生じる。SN-TBは感染力が低いにもかかわらずその持続期間が非常に長いため、SP-TBと同等の二次感染を引き起こしている可能性がある。