COVID-19流行の最中、梅毒の増加にも注目が集まっています。2015年以降、ずっと右肩上がりです。
(
日経メディカルREPORT 梅毒が半年で5283人、過去最悪ペースで増加中)
他の性感染症(STDs)が極端に増えてないのに梅毒だけが増えているのは、メディアなどでよく取り上げられ、検査希望で受診される方が増えたことも一因かもしれません。ただあくまで肌感覚ですが、本人が全く意図しない状況で受診し梅毒と診断されるケースも増えているように思います。もしかしたらCOVID-19流行下でSTDsの感染経路・構造そのものも変化してきているのかもしれません。
疾患でいうと男性の尿道炎、女性の子宮頸管炎ですね。
尿道炎は淋菌性と非淋菌性に別れ、非淋菌性の最多原因がクラミジア(C.trachomatis)です。
子宮頸管炎も淋菌性、クラミジア性、それからトリコモナス膣症があります。
非淋菌性非クラミジア性の尿道炎・子宮頸管炎の第三の原因として重要視されているのがMycobacterium genitalium(M. genitalium)です。
本レビューを参照しつつ、日本の現状を踏まえた要点をご紹介します。
①検査の問題
培養同定は困難で、基本的な検査は核酸増幅検査であるが本邦では保険未収載であった。
②耐性化の問題
1)マクロライド
上記の通り微生物同定自体が困難(自費)であったこともあり、疑った場合には本邦ではAZMの投与が推奨されていた。
しかしながら諸外国でマクロライド耐性化が進行し、初回治癒率の低下をもたらした。
このためマクロライド耐性遺伝子(23S rRNA)を検出し、治療方針を決定する個別化治療が既に導入されている。実際個別化治療により、初回治癒率が60%以下から92%まで回復したとする報告もある(本文参照)。
ようやく保険収載されたばかりの本邦からみればかなり先を行っている状況だ。
2)フルオロキノロン耐性
本邦ではAZM無効例についてはSTFXの投与が推奨されている。
M genitaliumの薬剤耐性の次なる問題点はこのフルオロキノロンに対しても耐性株が出現・増加していることだ。
いくつかの遺伝子変異(ParC、gyrAなど)が同定され、MFLXやSTFXの治療失敗と関連していることが報告されているが、マクロライドと異なりまだ個別化治療を選択できるほどの耐性化マーカーは同定されていない。
本レビューではParC Ser83Ile変異を予測マーカーとして利用可能なのではという提言がなされている。フルオロキノロン耐性の原因遺伝子を探るアプローチより、実際にフルオロキノロンによる治療失敗を予測しうるかに焦点を当てるべきという内容である。
(野生型ParC Ser83はMFLXの治療失敗が少ない)
本邦からもキノロン(MFLX,STFX)耐性株が報告されている。
同時にマクロライド耐性遺伝子を検出することとなっており、マクロライド感受性があれば続いてAZMで、マクロライド耐性が明らかであれば次の1wをMFLXで治療するというレジメンである。
本レビューではこれに加えてParC Ser83Ile変異を同定し、野生株であればMFLX治療は奏効する可能性が高く、ルーチンの治癒確認は不要としている。
本邦ではどうするか。検査体制が不十分であるなら、初回治癒率を上げるためにAZM+STFX(MFLX)にしてしまうという手もあるがおそらくイタチごっこになるでしょう。
AZMもキノロンもSTDsを中心とした他の感染症においてキードラッグであることを考慮すると、諸外国のガイドライン同様にMINOを第一選択薬の一つとして考慮すべきです。使用できるなら安全性、有効性ともにマクロライドが上回るため、M.genitalium核酸検査の保険収載だけでなく、薬剤耐性遺伝子検査(
LSIメディエンス)も早く保険収載されてほしいと願っています。
STDsだけではありませんが、感染症診断における核酸増幅検査などの遺伝子検査はもはやスタンダードなものとなってきています。
各診療科から結果の解釈についての問い合わせが増えているし、不適切な解釈・治療をみることも残念ながらあります。感染症内科でそのすべての診療領域をカバーできるほどの人材がおらず、任せきりになっていることにはむしろ申し訳ない気持ちです。お互いに補完しあいながらより良いSTDs診療を目指していきたいですね。
【まとめ】
・非淋菌非クラミジア尿道炎・子宮頸管炎(膣炎)の原因微生物としてM.genitaliumがある。
・診断には核酸増幅検査が必要で、ようやく最近になって保険収載された
・本邦ではマクロライド、フルオロキノロンが治療に用いられるがいずれも耐性菌の増加が問題
・耐性遺伝子を検出して個別化治療を行うことが望ましいが、まだ本邦では実装できていない。
・感染症診療において遺伝子検査はもはや必須である。関連診療科とのコラボレーションはこれまで以上に重要!
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