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抗生物質の使用量と耐性菌の相関 J-SIPHEを利用した北海道多施設研究

うちも頑張らないとなぁ、という意味でさらっと取り上げます。


まずJ-SIPHEについて
 J-SIPHE(Japan Surveillance for Infection Prevention and Healthcare Epidemiology:感染対策連携共通プラットフォーム)とは、
WHOが発表した「AMRに関する世界行動計画」の採択を受け、2019年に日本政府から委託された国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンターが開発した、AMR 対策のための全国規模のサーベイランスシステムです。参加した施設の感染症診療・対策の状況、医療関連感染の発生状況、主要な細菌や薬剤耐性菌の発生状況及びそれらによる血流感染の発生状況、抗菌薬の使用状況等に関する情報などを共通のプラットフォームに集約し、得られた知見を各医療機関・地域へと還元することが目的となります。その施設のサーベイランスデータが可視化しやすくなったのはもちろん、データの収集方法や保管が統一されることで、施設間の比較ができたり、共通認識をもつことで地域全体の感染対策へと寄与しやすくなる、などの効果が予想されます。もちろん、集計されるデータそのものがNational databaseとして構築・運用されていくことになります。

本論文はこのJ-SIPHEのデータを用いて、地域規模(多施設)で抗菌薬使用と耐性菌との関連を調査した最初の報告となります。


【目的】本研究は、北海道における抗生物質使用量と耐性菌の相関を評価するためのJ-SIPHEシステムの有用性を明らかにすることを目的とした多施設共同研究である。
【方法】2020年の19病院における抗生物質使用量と主要耐性グラム陰性菌検出率のデータをJ-SIPHEシステムから収集し、JMP Proを用いてデータ相関を解析した。
【結果】カルバペネム耐性緑膿菌検出率はカルバペネム使用量と有意な正の相関を示した(Spearmanのρ = 0.551; p = 0.015)。
フルオロキノロン耐性E. coliの検出率とpiperacillin/tazobactam、carbapenemsおよびquinoloneの使用との間にはそれぞれ有意な正の相関が認められた[ρ = 0.518(p = 0.023)、ρ = 0.76(p < 0.001)、ρ = 0.502(p = 0.029)]。
【結語】本研究はJ-SIPHEシステムを用いて抗生物質使用量と耐性菌の相関を調査した初めての多施設共同研究である。その結果、本システムの活用がAMR対策の推進に有効である可能性が示唆された。

いわゆる租なデータであり、病院毎の取り巻く環境や患者層の違いなどなど多くの交絡因子があるため本研究から因果を導くのは本質的に困難ですが、一度こうした形でまとめてしまえば、今後の地域規模、あるいは病院ごとの介入の効果を検証することが容易になります。
本研究が一つのモデルケースとなって、これから複数の報告(サーベイランス研究、介入研究)が日本からも活発に報告されることを期待しています。
(つまり、頑張ってやりましょうね!という内輪に向けたメッセージ・・・

by vice_versa888 | 2022-10-31 16:18 | 感染制御 | Comments(0)

私見と自分の勉強のための備忘録です(感染症を中心に呼吸器および内科全般)。何か間違いがあればご指摘いただければ幸いです。臨床と研究、GeneralistとSpecialist、仕事と家庭、理想と現実。最適解がわからずいつも悩んでいますが、揺れ動く自分の立ち位置を確かめながら前進したいものです。


by vice_versa888