久々の更新。
最近は研究関連の論文を読んでいることが多いです。ちょっとした息抜きがてら読んでいます。
今回は黄色ブドウ球菌菌血症をテーマに2つ論文を紹介。
○黄色ブドウ球菌菌血症対する個々のケアの質の指標(Quality-of-care indicators,QCI)の遵守が予後に与える影響
ヨーロッパとアジア、5つの国と地域の11病院で行われた前向き観察研究
【対象】
成人の黄色ブドウ球菌菌血症患者
(過去12 週間の黄色ブドウ球菌による血流感染と、血液培養採取72 時間以内の死亡例は除外)
【方法】
QCIとしては一般的なもので、
1)血液培養の再検
2)感染巣の早期コントロール(培養提出から72h未満)
3)心臓エコー検査
4)適切な抗菌薬の選択
5)適切な治療期間(複雑性と非複雑性で分けて解析)
としている(不死化バイアスの除外のため、各項目ごとに追加除外基準を定めている)。
それぞれの遵守率を算出し、
Primary outcomeとして90日死亡率への影響を検討した。
【結果】
解析対象となった1784例中、感染巣としては皮膚・軟部=カテーテル感染>その他で、感染性心内膜炎は7.6%に認められた。
(市中:医療関連感染症=1:2程度ですが、免疫不全患者はそれほど多く含まれていないコホートという印象)
MSSAが8割程度で、単変量解析ではやはりMRSAの方が死亡率が高く、また感染症内科医の評価があると予後が良い結果だった。
各QCIをみると
1)7割弱で再検されている 90日死亡への影響は乏しい
2)約4割で介入されており 90日死亡が少ない
3)約7割で実施され 90日死亡への影響は乏しい
4)約7割が適切で 90日死亡への影響は乏しい
5)8割弱が適切で 90日死亡への影響は乏しい(複雑性の方が遵守率は低い)
90日死亡に関連する因子に関して調整し、各項目の90日死亡への影響を解析
1)aHR 0.89(0.73-1.09)
2)aHR 0.76(0.59-0.99)
3)aHR 0.73(0.52-1.01)
4)aHR 0.75(0.61-0.91)
5)aHR 0.85(0.63-1.16)
【結語】
黄色ブドウ球菌菌血症マネジメントにおけるQCIは、これらをバンドルとして適用することで死亡率低下に寄与するが、中でも感染巣のコントロールと適切な抗菌薬選択は死亡率の低下と独立して関連していた。
この5つの項目からなるバンドル遵守や感染症内科医の評価・介入が死亡率低下に寄与することは有名ですが、そのうちどの項目がより重要であるか(=つまり、どういった点を重視して治療介入や指導を行うのがより効率的であると考えられるか)を考える上で重要な知見です。
持続菌血症の有無や心臓エコー検査はそれが感染性心内膜炎かどうか、さらに未知・未介入のfocusがないかを考える上で重要ですが、黄色ブドウ球菌菌血症全体でみた場合、ソースコントロールができて適切な治療ができてさえいれば多くの場合生命予後は変わらないだろうという解釈は妥当でしょう。
全体としての遵守率の低さはリアルワールドだとこんなもんだろうと思いました。
○MRSA持続菌血症のマネジメント(review)
Holland TL, Bayer AS, Fowler VG. Persistent MRSA Bacteremia: Resetting the Clock for Optimal Management. Clinical Infectious Diseases. 2022.
MRSA菌血症は、その背景として菌そのものの性質、医療関連感染症であること、人工物感染を引き起こすことなどがあり、より高い死亡率や持続菌血症となりやすいことが問題です。しかし黄色ブドウ球菌菌血症、特により持続しやすいMRSA菌血症において、「持続菌血症」の定義は明確ではありません(以前の記事:黄色ブドウ球菌(SA)菌血症の血液培養フォローはいつがよい? も参照)。
・持続菌血症の定義の変遷
かつては適切な治療を行なっているにもかかわらず7日間陽性が持続することとされていたが、バンコマイシン(VCM)以外の選択肢が増えている現在ではVCMの効果が乏しい場合には他剤へと変更することが多いため、定義をより短縮(3-5日)すべきだと提案されている。
・持続陽性期間と予後
持続菌血症が1日でも長くなると死亡リスク上昇に関連するという報告から、持続菌血症が疑われるなら早期にアクションを開始する(遠隔病変の確認)べき
・スキップ現象(培養が断続的に陽性になる):まだその意義はわからない。一概に治療期間の延長は不要(ただ短縮はできない。そうなる背景を考慮すべき;新たな感染、ダブトマイシン耐性化の誘導、免疫不全の存在etc)
・治療期間
持続菌血症はすべて「複雑性」として、より長期の治療期間が必要。治療薬の変更が良いのか、併用が良いのか、最適治療のエビデンスは不足している(最近は併用療法を検討した報告が多い)。
●治療アルゴリズムの提案
・初期治療:VCM(AUC/MIC)、DAP(8-10mg/kg/d)
・24-48時間後に血液培養再検
⇨陰性かつ複雑性の要素がない:非複雑性として最短14日間治療
・陰性だが複雑性の要素がある:複雑性として28日間治療
(非複雑性:治療72h以内に解熱、エコーでIEを否定したCRBSI/原発性菌血症、遠隔病変なし、人工物なしor抜去済)
・陽性だった場合には血液培養を再検(3,5日目):3〜5日以上持続する場合を持続菌血症と定義し、治療変更を行う。
陰性化した場合には、複雑性として28日間以上治療
基本的に持続SA菌血症はIEや遠隔病変の可能性を考えますので、エコーや全身検索が必要です。
これらを省略できるかどうかは、全身状態とPREDICTやVIRSTA スコアを参考に検討します。こういう場合に本当にTTEだけで良いのかは議論があるところですが、通常SA、特にMRSAが感染していた場合には進行性であり、経過から「わかる」ことがしばしばあります。基本的には手術適応の疾患と考えるべきでしょう。経過から否定的だった場合、治療期間と治療選択を考える上で重要なのは遠隔病変の有無です。時間をおくと明らかになってくることがありますので、目や骨や筋肉等新たな所見が出てこないか目を光らせています。
抗菌薬については、現状本邦ではバンコマイシン一択で良いと思います。投与設計上問題があるケースではダプトマイシンを選択することもあります。本邦の耐性菌の検出状況を考えると、バンコマイシン治療への反応が乏しい場合にはまずドレナージが必要な病変を検索することが先決でしょう。
cell-free DNAの検出やPET-CTの応用はブドウ球菌菌血症のイメージを広げてくれると思っていますが、まだそれが可能なのはごく一部の医療機関の一部の症例だけです。本邦でも臨床と研究のtranslationが進み、恩恵を得る患者さんが増えると良いのですが。
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