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膿胸の成因は誤嚥?血行性?

執筆やら発表やらで記事の更新が大分ご無沙汰です。
例年ブログ記事のまとめを年末にしてましたが、今年は記事自体が少ないのでやめておきます。
今後もExciteブログで続けるのか、noteなどに完全にお引越しするのかは現在検討中です。

さて今回は膿胸の論文です。

Dyrhovden R, Eagan TM, Fløtten Ø, Siljan W, Leegaard TM, Bø B, et al. Pleural Empyema Caused by Streptococcus intermedius and Fusobacterium nucleatum: A Distinct Entity of Pleural Infections. Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America. 2023;77(10):1361-71.



【背景】

市中胸膜感染症(胸膜炎や膿胸)の多くはヒト口腔微生物叢に由来する通性嫌気性細菌によって引き起こされる。このような感染症の疫学、臨床的特徴、病態、および病因についてはほとんど研究されていない。今回の前向き多施設コホート研究の目的は、このような口腔微生物に由来する胸膜感染症(OPI)の微生物学的および臨床的特徴を徹底的に明らかにし、根本的な病因および関連する危険因子についての理解を深めることである。


【方法】

ノルウェーの6病院が参加した前向き観察研究

2020年1月〜2021年12月までの2年間で臨床的に市中胸膜感染症が疑われた症例を対象とした。病原微生物の確認は胸水培養または16S rRNA遺伝子PCRで行った。

除外:肺に浸潤している可能性のある既知のがん、重度の免疫不全、妊娠

また対照患者には副鼻腔のCT検査と歯科的評価のための口腔外科医への紹介が奨励された。

OPIの病因における歯科由来細菌の血行性播種が果たす役割の可能性をさらに検討するため、本研究で得られた微生物学的所見を、歯科感染症の微生物学、感染歯抜歯後の菌血症、および脳膿瘍の微生物学に関する過去の研究結果と比較した。


【結果】

OPI患者から、89種、267細菌を同定した。

すべての感染症においてStreptococcus intermedius/Fusobacterium nucleatumが主たる構成要素として同定された。われわれは口腔型胸膜感染症患者に歯科感染症の高い有病率(8割)を認め、このような胸膜感染症の微生物学的特徴と、歯原性感染症、歯原性菌血症、および市中感染脳膿瘍の微生物学的特徴との間にかなりの類似性があることを示した。


【結語】

OPIは市中胸膜感染症の最も一般的なタイプである。現在のところ、最も重要な基礎的病因として歯科的焦点からの細菌の血行性播種が支持されている。Streptococcus intermediusおよびFusobacterium nucleatumが感染の成立に必要な主要病原体である可能性が高い。



過去、肺膿瘍/膿胸の少なくとも一部はmicro-aspirationを原因とする、誤嚥性肺炎の延長のようなものと理解されていました。今回の検討では胸水(膿胸)から検出される病原体と歯性感染症/菌血症の病原体や脳膿瘍の病原体の構成が類似していることが示され、誤嚥よりも血行性感染が膿胸発生の主因であることが支持される結果でした。OPIの細菌学的検査では多くが複数菌検出されていましたが、aspirationならもっと多様な菌が検出されるのでは?ということみたいです。

またnon-OPIの病原体も(肺炎球菌はどちらもあると思いますが)S.aureusE.coliといった血行性播種が想定されるものが認められています。

膿胸を見たら、「歯性感染症」と「血行性病変(特に脳膿瘍)」を想定することが重要ですね。非口腔内微生物の場合は、それらのfocusを探しに行くことも大事です。


培養同定検査では先行する抗菌薬投与やすでに感染から時間経過していることや、あるいは嫌気性菌の分離同定が困難なことから病原体の検出ができないことがしばしばあります。当院では培養検査と同時、あるいは結果をみてから本研究と同様16S rRNA検査を実施しています。ただこの検査にしても一定のThresholdがあるわけで、aspirationの関与ではないことの証明は難しい気がします。


成因が誤嚥であっても、歯性感染症であっても基本的な予防の方針は同じです。基本的な口腔ケアや歯科治療、摂食(嚥下)リハビリテーションですね。またリスクファクターとして年齢(高齢)、併存症やアルコール、PS不良など(Thorax. 2021)があり、基本的な内科的介入だったり、時には高齢終末期としての対応も重要です。



まとめ

○膿胸患者の多くに歯性感染症を合併する

○膿胸の成因として口腔内微生物の血行性感染が関与している可能性がある

○膿胸を見たら歯性感染症と血行性病変を探すこと

○予防と終末期ケアも大事


by vice_versa888 | 2023-12-25 15:43 | 感染症全般 | Comments(0)

私見と自分の勉強のための備忘録です(感染症を中心に呼吸器および内科全般)。何か間違いがあればご指摘いただければ幸いです。臨床と研究、GeneralistとSpecialist、仕事と家庭、理想と現実。最適解がわからずいつも悩んでいますが、揺れ動く自分の立ち位置を確かめながら前進したいものです。


by vice_versa888