COVID-19の波に直面したICUスタッフにおけるレジリエンスとメンタルヘルス
2024年 01月 16日
レジリエンス(Resilience)とは「回復力」とか「弾性」という意味ですが、心理学において困難やストレスに直面した際にそこからしなやかに回復・適応する能力を指します。誰もが備えている能力ですが、元々の気質に加え、環境など様々な因子により影響をうけます。特に現代のように複雑で変動の大きい時代(いわゆるVUCA: Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))では、レジリエンスを高めることは重要です。医療を取り巻く環境もCOVID-19を筆頭に大きな変化を迎えており、スタッフのメンタルヘルス(特にいかに離職を減らすかなど)対策を整えることが急務となっています(正直後手後手ですが)。
【背景、理論的根拠】
(心理的)レジリエンスは、医療従事者(HCP)におけるCOVID-19に関連したメンタルヘルス症状に対する潜在的な防御メカニズムを提示する
【目的】
第5次パンデミックの波に直面している集中治療室のHCPにおけるレジリエンスの決定因子を明らかにすること
【方法】
フランス、21のICUにおける横断研究である。HCPはCD-RISC10(レジリエンス評価)、HADS(不安と抑うつを評価)、IES-R(PTSDの評価)にそれぞれ記入し、レジリエンス、不安、抑うつ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を評価した。レジリエンスと独立して関連する因子を同定した。
【結果】
回答率は73.1%(950/1300)であった。CD-RISC10スコアの中央値は29(25-32)であった。不安、抑うつ、PTSDの症状の有病率はそれぞれ61%、39%、36%であった。インフォデミアはうつ病とPTSDの症状と相関していた。レジリエンスの高さは、不安、抑うつ、PTSDの有病率の低さと独立して関連していた。男性では、第1波に直面し、50人以上のCOVID-19患者を管理し、労働時間と意欲が増加し、終末期の決定が前の波と比較してより合意的であったと報告したHCPでレジリエンスが高かった。逆に、進行中の波の間に10人以上の死亡を管理したHCP、より怯えたり孤立していると述べたHCP、または前の波と比較してより多くのインフォデミアを報告したHCPは、より低い回復力を経験した。
インフォデミア(インフォデミック):正確な情報と不正確な情報の両方が混在し、事実が噂や恐怖と融合することで、迅速かつ広範に拡散すること
【結果】
本研究は、レジリエンスの修正可能な決定因子を明らかにし、適切に評価されるべき訓練-技能に基づく介入の構成要素を枠組みづけるものである。HCPの支援は依然として満たされていない大きなニーズであり、この研究はHCPのメンタルヘルス症状を予防し緩和する責任を共有するために、病院の管理者、院長、政策立案者、ICUの指導者が責任を負うことを求めている。
初期の波の影響が大きく、スタッフの離職に繋がっていた感覚はあります。徐々に慣れてくること、経験を共有していく中で組織としてのレジリエンスは高まっていった気がします。一方で個人へのサポートを行う余裕はあまりなかったように思います。重症かつ不慣れな環境というのは大きくレジリエンスを損ねる可能性があります(この辺は新人教育、スタッフの定着を考える上でとても重要ですね)。また本邦ではインフォデミックへの対応が不十分だった(首相官邸や厚生労働省の情報発信は有益でしたが、あまりに足を引っ張る人が多かった印象...)気がします。
個人的に重要だと思ったポイントは終末期判断が合議的に行われることとレジリエンスに関連があったということですね。
もう少し経営側がスタッフのメンタルヘルスにも関心をもってほしいですね(結果的に生産性も上がるのに)。
