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グルココルチコイドに関連した日和見感染症のリスク(Review)

作用機序を含めたグルココルチコイドの感染リスクに関する総説です。
やはり重要なのはニューモシスチス肺炎(PCP、PjP)ですね。

Chastain DB, Spradlin M, Ahmad H, Henao-Martínez AF. Unintended Consequences: Risk of Opportunistic Infections Associated With Long-term Glucocorticoid Therapies in Adults. Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America. 2023.



○グルココルチコイドによる易感染性

・多因子性(併存疾患、併用薬etc)

・T細胞、B細胞に影響するが、なかでもCD4+T細胞への影響がより深刻である

・リンパ球増殖および活性の低下だけでなく、貪食やオプソニン化の障害、抗酸球抑制、創傷治癒遅延を引き起こし、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫感染症への感受性が亢進し、潜在性感染症の再活性化を生む


○感染症および日和見感染症のリスク

・グルココルチコイドの投与量、投与期間、強さ、宿主因子、免疫抑制療法の併用に影響される


自己免疫疾患

PSL換算(以下省略)≧10mg/日(あるいは≧7.5mgとする報告もある)で、用量依存的に感染症リスクが増加する

・関節リウマチ患者において、PSL≧5mgでも重篤な細菌感染症のリスクが高まる

・3ヶ月以内のPSL≧5mg、6ヶ月以内のPSL≧10mgも帯状疱疹発症リスクと関連する

・抗酸菌感染症とPSL用量については一貫した見解はなさそう

・真菌、寄生虫疾患については、高用量の方がリスクは高い可能性があるが、そもそも数が少ない


<免疫チェックポイント阻害薬

・そもそも腫瘍に関連した易感染性が存在(局所感染、疾患進行、デバイスや手術による物理的障壁の破壊、治療(殺細胞性抗癌剤など))

・ステロイドは前投薬、抗腫瘍、症状緩和に使用されるが、免疫チェックポイント阻害薬の登場以降、免疫介在性有害事象(irAE)の治療薬としても使用されるようになった

・ステロイド投与は細菌感染症のリスクはそこまであげないかも(重症化とは関連するかも)

・日和見感染症のリスクは増加(結核は?)


○リスクの定量化

・多因子が関連するためPSL投与量だけでリスクを推定することは難しい

・PSL換算量だけでなく、ステロイドの種類、投与方法(パルス、分割投与)による違いも想定される

・背景疾患でも異なる

・免疫チェックポイント阻害薬に関連した感染症は、免疫抑制に伴うものと免疫調節障害に伴うものに分けられるのでは?

(免疫チェックポイント阻害薬単独による日和見感染症も存在)


○予防

・結局ひとまずはPSL換算量でリスクを推定し、他のリスクを合わせて予防の判断をするしかない

自己免疫疾患

・結核:PSL≧15mg,28日(流行地域、背景因子があればこれ以下でも)をリスクとし、できれば投与前にスクリーニング(IGRA)

・PjP: PSL≧15mg,14-28日、またはこれ以下でもPjPリスクがある、既往がある場合には予防投与(ST合剤など)

・クリプトコッカス:リスク+症状(抗原検査)

・帯状疱疹:ステロイド(+年齢などリスク)があればワクチン接種(不活化ワクチン)

・糞線虫:流行地ではIgG、便検査を(+土壌や糞便といった感染リスクを避ける)

<irAE治療中>

・結核:PSL治療前できれば免疫チェックポイント阻害薬投与前にスクリーニング(IGRA)

・PjP: PSL≧20mg,28日、予防投与(ST合剤など)

・クリプトコッカス:リスク+症状(抗原検査)

・帯状疱疹:PSL治療前できれば免疫チェックポイント阻害薬投与前にワクチン接種(不活化ワクチン)
(血液悪性腫瘍やアレムツズマブ投与例に関して抗ウイルス薬による予防を考慮)

・糞線虫:流行地ではIgG、便検査を(+土壌や糞便といった感染リスクを避ける)


日和見感染症のうち、予防可能かつ死亡に関連するという意味で最も重要なのはニューモシスチス肺炎(PjP)ですね。

(予防と治療については以前にも記事を書きました。ニューモシスチス肺炎(PCP, PjP)の予防と治療 ST合剤はもっと少なくても良いのか)

自己免疫疾患のPjP予防についてはある程度確立されてきた(もう少しST合剤減らせるかもしれませんが)のですが、悪性腫瘍に対するステロイド投与に関連したPjP予防、治療については結構難しいと思っています。


1)いつ、誰に予防を開始するか

特に予後がある程度限られた患者さんに対する緩和的なステロイド投与の際にPjP予防を開始するかは悩みどころです。推定予後が半年程度ありそうな方ならプレドニゾロンを優先して使用し、症状改善が得られたところで早期に減量を図り、上記基準を満たしそうな方(+他のPjPリスク)では予防内服を行っています。ただ、2-3ヶ月程度なら副作用リスク等を考慮し、あえて予防を開始しないことも多いです(しばしばプレドニゾロンよりもデキサメサゾンなどを使用します)。


2)免疫チェックポイント阻害薬とST合剤

irAEに対してステロイドを使用し、PjP予防としてST合剤を開始した際に、稀ですが重症薬疹などの重篤な有害事象を経験します。もちろんすべてがST合剤に関連したものとは言えませんし、実際のところリスクがどのくらいなのかは不明な点が多いですが、立て続けに経験したこともあってか少し躊躇してしまいます。しかも背景疾患の個別性も大きいので考えてしまいます。


帯状疱疹は積極的に予防(ワクチン)したいですね。



【2024/02/19追記】

HIV/nonHIV-PjPに関する過去最大規模のコホート(n=481, 後ろ向き)が報告されていました。

Lécuyer R, Issa N, Camou F, Lavergne RA, Gabriel F, Morio F, et al. Characteristics and prognosis factors of Pneumocystis jirovecii pneumonia according to underlying disease: a retrospective multicentre study. Chest. 2024.

やはりPjPそのものの予後は自己免疫性疾患に関連したものが最も予後が不良だったようです。

一方で全死亡に関しては固形臓器腫瘍が最も予後不良でした。固形臓器腫瘍に関連したPjPは、多くの場合疾患進行に関連(緩和としてのステロイド使用も含む)するということが示唆される結果でした(免疫チェックポイント阻害薬投与例は少ない)。

ただ、恐ろしいことにこのコホート全体にPjPの予防投与を受けている割合が非常に低く、このことが上記結果含めてアウトカムに影響している可能性は否定できません。

HIV vs. non-HIVの解析では、過去の知見と同様でした。

1)non-HIVで臓器障害(SOFAスコア)、Mechanical ventilationが多い

2)Cyst陽性率はHIV>non-HIV
non-HIVの疾患別に上記傾向が異なっていたら面白いですが、概ね同様でした。やはりCD4+低下の違いなのでしょう。

ただSOTレシピエントに関してややCyst陽性率が高めだったりするのは、これらの患者における日和見感染症リスクとCD4+細胞数との関連と無関係ではないのかもしれません


ステロイド投与(特に1ヶ月以上)とPjP予防はセットです。ST合剤のマネジメントは面倒なことがありますが、予後に与える影響を考え、忘れずに検討しましょう。


by vice_versa888 | 2024-02-17 17:12 | 感染症全般 | Comments(0)

私見と自分の勉強のための備忘録です(感染症を中心に呼吸器および内科全般)。何か間違いがあればご指摘いただければ幸いです。臨床と研究、GeneralistとSpecialist、仕事と家庭、理想と現実。最適解がわからずいつも悩んでいますが、揺れ動く自分の立ち位置を確かめながら前進したいものです。


by vice_versa888