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肝障害(Child-Pugh B/C)患者に対する通常量のCaspofungin投与

タイムリーに議論があったので軽く紹介します。
肝障害(特に非代償性肝硬変)の場合の抗菌薬・抗真菌薬投与選択、設計って結構悩みます。
重大な肝障害で減量の推奨事項があるのは、クリンダマイシン、チゲサイクリン、メトロニダゾール、ボリコナゾール、カスポファンギンなどです。
カスポファンギン(CPFG)は添付文書上Child-Pugh 7-9(B)では35mg/日への減量(初回は通常通り70mg)が推奨されています。
またChild-Pugh10点以上(C)では投与経験がないとされています。
同じキャンディン系のミカファンギン(MCFG)では調節不要とされています。重度肝障害患者への投与経験も増えており、低Albなどの影響か、むしろクリアランスが高まる可能性が示唆されています(Infect Dis Ther. 2020;9(1):151-163.)
レビューも置いときます(J Antimicrob Chemother. 2018;73(suppl_1):i33-i43.)
さてCPFGでは本当に減量が必要となるような重大な有害事象が出現するのかということが今回の研究のテーマとなっています。


【背景と目的】
肝障害患者、特にChild-Pugh BまたはCの肝硬変患者におけるCPFGの用量調節の必要性については議論がある。本研究の目的は、実臨床におけるChild-Pugh BおよびCの肝硬変患者におけるCPFGの標準用量投与の安全性および有効性を調査することである。

【対象と方法】
2018年3月から2023年6月までに中国重慶医科大学第二附属病院でCPFGの標準用量投与を受けたChild-Pugh B患者67例、Child-Pugh C患者191例を含む肝硬変患者258例の電子カルテをレトロスペクティブにレビューした。投与前と投与後7、14、21日目の白血球、肝機能、腎機能、凝固機能の結果を照合し、CPFG治療終了時に全患者で有効性を評価した。

【結果】
137例(53.1%)で良好な効果が得られたが、34例(13.2%)では死亡した。プロトロンビン時間または国際標準化比(PT-INR)の上昇、あるいはWBCが減少した患者も認められたが、肝機能障害や腎機能障害の増悪は確認されず、カスポファンギン治療中に副作用のために用量の中断や調節を必要とした患者はいなかった。

【結論】
CPFGの標準用量はChild-Pugh BまたはCの肝硬変患者において安全かつ効果的に使用可能であり、潜在的な治療効果未満の曝露を回避するために、この集団における最も適切な投与レジメンを再評価することが必要である。


こちらの考察でもやはり低Alb血症の影響(ビリルビンの影響はcontroversial)が議論されていました。
そもそもChild-Pugh分類は肝代謝の指標ではなく、BかCかで薬剤の投与量を調整してよいものかは議論があります。肝代謝は原疾患だけでなく個人による差も大きいです。また多くの試験では安定した状態の肝硬変患者を対象としており、感染症を発症した状態の悪い肝疾患患者(それこそ低Alb血症があるような)にそのまま適応するのも難しいです。

結局のところ、肝障害がある患者への抗菌薬、抗真菌薬の選択は
1)可能なら肝障害リスクのある薬は避ける(undertreatmentを避ける>肝障害リスク)
2)TDMできる薬剤を選択する(ボリコナゾールなど)
3)代替薬がない場合には、現状は添付文書通りの使用が望ましい
ただ、undertreatment(特に低Alb血症)の可能性を考慮し、感染症の制御が困難と考えられるなら
注意深いモニタリングをしながら増量(通常量)することも考えた方が良いだろう
と思っています。

MCFGの供給不足がなければundertreatmentを避けるという意味で、MCFG > CPFGなんでしょうけどね...。

by vice_versa888 | 2024-03-26 17:08 | 感染症全般 | Comments(0)

私見と自分の勉強のための備忘録です(感染症を中心に呼吸器および内科全般)。何か間違いがあればご指摘いただければ幸いです。臨床と研究、GeneralistとSpecialist、仕事と家庭、理想と現実。最適解がわからずいつも悩んでいますが、揺れ動く自分の立ち位置を確かめながら前進したいものです。


by vice_versa888