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アスペルギルスガラクトマンナン抗原の偽陽性

非常にシンプルな論文です。
どんな検査も限界を理解して使用することが大事です(結果に翻弄されない)。


【目的】
本研究は、当センター(ソウル聖母病院)における血清アスペルギルスガラクトマンナン抗原(GM)偽陽性の原因を明らかにすることを目的とした。

【方法】
GM偽陽性に関連する因子を明らかにすることを目的とした症例対照研究を実施した。GM偽陽性の独立した危険因子を多変量回帰分析により評価した。同定された因子を除去する介入の有効性を評価するために、中断時系列解析が用いられた。

【結果】
568人の検査患者のうち、GMが陽性であったのは130人で、うち97人が偽陽性であった(症例)。これらを真性GM陰性の患者427人(対照)と比較した。GM検査前6日以内の糖含有輸液の投与はGM偽陽性の独立した予測因子であった(調整オッズ比[aOR]18.60、95%CI 8.95-38.66)。異なる糖含有輸液中のGMの存在を分析したところ、34.8%(8/23)(メーカーA)および33.3%(5/15)(メーカーB)の検体で陽性であった。製造工程を調査した結果、糖化工程でAspergillus niger由来の酵素を使用していることが判明した。偽陽性の根本原因を特定した後、GM含有糖液の使用を制限した。中断時系列分析では、GM偽陽性の即時減少(-6.5%/週、P = 0.045)と、介入後の減少傾向(-0.33%/週、P = 0.005)が示された。

【結論】
糖含有輸液の投与は、血清アスペルギルス抗原GMアッセイで偽陽性を引き起こす主要因であった。我々の調査により、糖含有輸液の製造工程が修正された。

尚、同じく2024年ソウル大学盆唐病院から同様の報告が行われています。同じメーカーでしょうか(Sci Rep. 2024;14(1):2552.)?


○アスペルギルスGM抗原について
GMはアスペルギルス属の細胞壁の主要成分です。EIA法で血清中のGM抗原を定量するのがGM抗原検査です。
カットオフ値はODI=1.0とされています(メーカー推奨は0.5)
深在性真菌症の診断基準であるEORTC/MSG診断基準の菌学的所見の一つとなっています。
血清だけでなく(保険適用外ですが)肺胞洗浄液や髄液中のGM抗原も診断に有用とされています。

○偽陽性が多い!
輸液や血液製剤などの製造過程で混入する可能性が指摘されています。
(例えば、免疫グロブリン製剤が有名です。Clin Microbiol Infect. 2020;26(11):1555.e9-1555.e14.)
上記2つの研究結果から、糖液の精製過程(糖化過程の酵素がアスペルギルス由来であった)での混入は有力な偽陽性の原因であると考えられます。
またβラクタム系抗菌薬の注射も偽陽性の原因の一つ(これも精製過程の混入)であると報告されています。
そもそも真なるアスペルギルス症である可能性が低い状況でスクリーニング的に用いられれば偽陽性が増えてしまうのは当然のことと言えます。

○GM抗原を含むアスペルギルス症血清診断法の適正利用(私見)
1)GM抗原はスクリーニング検査として使わない
侵襲性アスペルギルス症が想定される、あるいは非常にリスクが高い場面を除き、GM抗原検査を頻用することはお勧めできません。
(もちろん限界を理解した上で、限られたケースで比較検査として行うことまでは咎めません)
以前に紹介した研究ではハイリスク群を急性白血病に対する化学療法導入とallo-HCT例と定義し、それ以外は陽性的中率が低いのでGM抗原検査を推奨しないという結果でしたね(好中球減少を伴う血液疾患患者における侵襲性真菌症(IFD)早期発見のためのバイオマーカー検査とCT)。

2)診断目的に合わせた検査項目の選択
例えば参考になるのはこちらのReviewの図(Med Mycol. 2015;53(5):417-39.)です。
GM抗原:侵襲性アスペルギルス症(と一部のsub-acuteな慢性進行性肺アスペルギルス症)
アスペルギルスIgG抗体:慢性進行性肺アスペルギルス症とアレルギー性気管支肺アスペルギルス症
アスペルギルスIgE抗体:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
GM抗原と抗体検査を一緒に提出しないことが基本です。


まとめ
○アスペルギルスGM抗原は偽陽性が多い
1)精製過程の混入の可能性がある
2)適正使用が最も重要 スクリーニング的な使用はハイリスク例を除き行わない
3)可能なら菌学的所見を集めよう(培養、局所のGM抗原、病理、PCR、etc)

by vice_versa888 | 2024-05-18 16:55 | 感染症全般 | Comments(0)

私見と自分の勉強のための備忘録です(感染症を中心に呼吸器および内科全般)。何か間違いがあればご指摘いただければ幸いです。臨床と研究、GeneralistとSpecialist、仕事と家庭、理想と現実。最適解がわからずいつも悩んでいますが、揺れ動く自分の立ち位置を確かめながら前進したいものです。


by vice_versa888