グラム陰性桿菌(GNR)菌血症はcommon&(しばしば)severeな病態ですね。
1. 分類 GNRは大きく以下の3つにわけられます。
○腸内細菌目細菌(Enterobacterales)
・大腸菌、クレブシエラなどcommonな病原体
・尿路感染症、胆道系感染症、腹腔内感染症、肺炎など、市中感染症でも院内感染症でも
・薬剤耐性で問題となるのはESBLs>AmpC
○嫌気性菌(Anaerobes)
・Bacteroidesなどの腸管粘膜の常在菌
・詰まる、破れるなどして多くの場合他のGNRと混合感染を起こす
・膿瘍の原因となり、ドレナージや長期治療を要する
○ブドウ糖非発酵菌(Non-fermenters)
・緑膿菌、アシネトバクター、S. maltophilia など
・院内感染、デバイス感染など医療関連感染症が多い
・多剤耐性
2.グラム陰性桿菌による菌血症
基本的に1セットでも陽性になれば真なる菌血症として考えます。
好気ボトルのみで発育する比較的小さなGNRはブドウ糖非発酵菌である可能性 があります。
commonですがそれなりに死亡率の高い病態であり、30日死亡率は1-2割程度です。
一般に尿路感染症>胆道・腹腔内感染症>肺炎>その他の順で多いです。
日本化学療法学会の委員会報告では、
分類頻度としてはE.coli > Klebsiella属菌 > P. aerugonosa > Enterobacter 属菌 > Bacteroides 属菌であり、施設の規模や患者層によって多少の順位の違いはあると思いますが、概ねこの辺りが代表的でしょう。
3. 薬剤耐性
1)ESBL(Extended Spectrum beta-Lactamase)産生
本来ペニシリン系(=基質)のみ分解する酵素に変異が生じ、セファロスポリン系まで分解できるようになった(=拡張した)ものです。プラスミド上にこの遺伝子を保有している場合、異なる細菌間で伝播(水平伝播)することが問題となります。腸内細菌目細菌で問題となることが多く、上記の解析でもE.coliの2割程度に認められています。本邦ではCTX-M型が最多です。またフルオロキノロンにもしばしば耐性である ことに注意が必要です。
少なくとも過去に検出された患者ではカバーが必要になります。
治療はカルバペネム 系(またはセファマイシン系)が基本です。 PIPC/TAZも感受性を有することが多いですが、MERINO trial(
JAMA, 2018. PMID: 30208454 )でMEPMに対して非劣性を証明できなかったことから、少し分が悪い印象となってしまっています。正確にはこの試験で対象となっているのはCTRX耐性菌であること、blaOXA-1といったTAZによる阻害を受けない遺伝子の頻度が多かったこと、グループ間の差やPIPC/TAZの投与量が不適切だった可能性などが指摘されており、こうした点を考慮して現在PeterPen trialという別の試験が走っています(
PMID: 33558347 )。
CMZについては尿路感染症を中心に複数のretrospective研究があり(PMID:
37901123 、
27538488 、
37702483 )、少なくともソースコントロールされたESBLs菌血症(特に尿路感染症)ではCMZは安全に使用可能と考えられますが、現在前向き試験(CEFMEC trial)が行われておりますのでその結果も待ちたいと思います。
個人的には待てるなら(ソースコントロールできるなら)CMZないしPIPC/TAZで全く問題ない と思っています(あるいは積極的にde-escalation)。
2)Amp-C β-ラクタマーゼ(過剰)産生
E. cloacae、K. aerogenes、C. freundii、P.aerugonosa などが染色体上に保有しているβラクタマーゼで、通常第3世代までのセフェムを分解します(プラスミド上の遺伝子が水平伝播しクレブシエラなどが保有することもあります)。量が少ないうちは問題となりませんが、抗菌薬曝露によって誘導、過剰産生すると耐性が顕在化し臨床上問題となります(当初感受性あり→治療中に耐性化)。
尿路感染症など比較的短期間治療で済む場合はあまり気にしなくても良いかもしれませんが、ソースコントロール不能だとか、骨髄炎など長期に治療が必要な場合などでは特に考慮を要します。基本的にはCFPMまたはカルバペネム で治療を行います。
Empiricalな抗菌薬選択としては上記のような耐性菌のリスクを考慮して行いますが(あるいは通常菌血症と判明する前に治療が行われている)、感受性結果に基づいて狭域抗菌薬に変更することは安全である と証明されています。
4.血液培養のフォローアップは必要か?
基本的には不要と考えて良いです。
今年の論文を一つ紹介します。
Ong SWX, Luo J, Fridman DJ, Lee SM, Johnstone J, Schwartz KL, et al. Follow-up blood cultures do not reduce mortality in hospitalized patients with Gram-negative bloodstream infection: a retrospective population-wide cohort study. Clinical microbiology and infection : the official publication of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases. 2024.
【目的】グラム陰性血流感染症 (GN-BSI) 患者における血液培養フォローアップ (FUBC) の有用性は議論の的となっている。観察研究では死亡率の有意な改善が示唆されているが、単一施設であること、不死時間バイアス、および残余交絡因子によって制限される可能性がある。カナダのオンタリオ州で集団全体を対象とした後ろ向きコホート研究で、GN-BSI 患者の死亡率に対する FUBC の影響を調査した。
【方法】2017年4月から2021年12月までに入院したGN-BSIの成人患者を対象とした。主要評価項目は30日以内の全死亡率とした。FUBCは時間変動曝露として扱った。副次評価項目は90日死亡率、入院期間、30日目と90日目の生存日数と退院日数とした。
【結果】34,100 人の患者が対象となり、8807人 (25.8%)が FUBC を受け、そのうち 966人 (11.0%) が陽性だった。FUBC を受けた患者の割合の中央値は、101 の病院全体で 18.8% (四分位範囲、10.0-29.7%、範囲、0-66.1%) であり、これは陽性率および汚染率と相関していた。FUBC グループの 890人 (10.1%) の患者とFUBC なしグループの 2263人(8.9%)の患者が 30 日以内に死亡した。完全調整されたモデルでは、FUBCと死亡率の間に関連性はなかった (HR、0.97、95% CI、0.90-1.04)。FUBC 患者は入院期間が有意に長く(中央値 11 日対 7 日、調整リスク比 1.18、95% CI 1.16-1.21)、30 日および 90 日時点での生存日数および退院日数が短かった。
【結語】GN-BSI 患者における FUBC 採取は病院によって大きく異なり、明らかな生存利益がないまま入院期間が長くなる可能性がある。観察研究であり、残存交絡が存在する可能性がある。ルーチン FUBC を広く採用する前に、ランダム化試験で明らかな利益を実証する必要がある。
血液培養のフォローアップの目的は①治療効果判定②持続菌血症=人工物感染や感染性心内膜炎がないか 、という確認です。
多くのGNR菌血症は二次的(primaryな感染巣が他にある)なので、治療経過が良好であるかは感染臓器パラメータを確認すれば問題ないわけです。GNR持続菌血症のリスクについてはわかっていないことが多いのですが、
・人工物感染(カテーテル感染含む)や感染性心内膜炎を疑う状況
・多剤耐性菌(緑膿菌など)
・治療に反応していない/感染源不明(=膿瘍や別の感染ソース、人工物感染があるかも)
といった場合にはフォローアップを行うことを考慮します。
5. 感染症(ID)コンサルトの必要性
これについても今年論文が出ていました(同じところ、ほぼ同じ患者集団)。
ソースコントロールができているcommonな疾患(尿路感染症、胆道感染症など)では必要性は低いかもしれませんが、是非積極的に活用ください。
Ong SWX, Luo J, Fridman DJ, Lee SM, Johnstone J, Schwartz KL, et al. Association between infectious diseases consultation and mortality in hospitalized patients with Gram-negative bloodstream infection: a retrospective population-wide cohort study. Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America. 2024.
【目的】グラム陰性血流感染症 (GN-BSI) における日常的な感染症(ID)コンサルトを裏付けるデータは限られています。オンタリオ州で、リンクされた保健行政データベースを使用して、集団全体を対象とした後ろ向きコホート研究で、GN-BSI 患者の ID 相談と死亡率の関連性を評価した。
【方法】2017年4月から2021年12月までにGN-BSIで入院した成人患者が対象となった。主要評価項目は、30日で打ち切られた全死亡までの時間であり、病院をランダム効果とする混合効果Cox比例ハザードモデルを使用して分析された。最初の血液培養陽性から1~10日後のIDコンサルトは、時間変動曝露として扱われた。
【結果】53の病院におけるGN-BSI患者30159人のうち、11013人(36.5%)がID相談を受けた。病院全体でのGN-BSI患者のIDコンサルトの中央値は35.0%で、大きなばらつきがあった(範囲2.7-76.1%、四分位範囲19.6-41.1%)。IDコンサルトを受けた患者1041人(9.5%)が30日以内に死亡したのに対し、受けなかった患者は1797人(9.4%)であった。完全調整された多変量モデルでは、IDコンサルトは死亡率の利益と関連していた(調整HR 0.82、95% CI 0.77-0.88、p < 0.0001、絶対リスク減少-3.8%またはNNT 27に相当)。主要評価項目の探索的サブグループ解析では、高リスクの特徴(院内感染、複数菌または非腸内細菌感染症、抗菌薬耐性、尿路以外の感染源)を持つ患者では、IDコンサルトがより大きな利益をもたらす可能性があることが示された。
【結語】早期のIDコンサルトは、GN-BSI 患者の死亡率の低下と関連していた。リソースが許せば、患者の転帰を改善するために、この患者集団に対する定期的なIDコンサルトを検討すべきである。
多くの施設で血液培養陽性例に対するラウンドが実施されていると思います。治療のRecommendationを行う/受けることも多いと思いますが、特に複数菌や薬剤耐性感染、感染源が不明または難治性である場合には積極的にIDコンサルト、相談 をいただければ と思います(それ以外の場合も抗菌薬選択・推奨される投与期間など是非参考にしてください)。
◯GNR菌血症はcommonであるが、それなりに死亡率が高い
◯多剤耐性、難治例では血液培養フォロー&IDコンサルトを
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