【背景】血流感染症(BSI)は高い罹患率および死亡率と関連している。 早期の適切な抗生物質療法が重要であるが、治療期間は不明である。
【方法】多施設共同非劣性試験(オーストラリア、カナダ、イスラエル、サウジアラビア、ニュージーランド、スイス、アメリカ)。ICUを含む入院患者でBSIを発症した患者を無作為に抽出し、7日間または14日間の抗生物質治療を行った。抗生物質の選択、用量、 経路は治療チームの裁量に委ねられた。主要評価項目はBSIの診断から90日以内のあらゆる原因による死亡とし、 非劣性限界値は4%ポイントとした。
<除外基準>
1)すでに試験登録済
2)重度の免疫不全(Neu<500/μL、固形臓器移植や造血幹細胞移植後の免疫抑制)
3)人工弁や人工血管がある(冠動脈ステントは除外対象ではない)
4)長期治療を要する状態:感染性心内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、ドレナージ不能な膿瘍、除去・洗浄不能な人工物感染
5)コンタミネーションを疑う菌の検出
6)黄色ブドウ球菌(MSSA/MRSA)
7)カンジダを含む真菌
【結果】7か国74病院において、3608人の患者がランダム化され、 ITT解析に含まれた。1814人の患者は 7日間の抗生物質治療に割り当てられ、1794人は14日間の治療に割り当てられた。登録時、患者の55.0%が ICUに、45.0%が一般病棟に入院していた。市中感染(75.4%)、院内感染(13.4%)、ICUでの発症(11.2%)だった。 菌血症は尿路が最も多く(42.2%)、腹部(18.8%)、肺(13.0%)、 血管カテーテル(6.3%)、皮膚または軟部組織(5.2%)から発生していた。 90日までに、 7日間抗生物質を投与された患者の14.5%にあたる261人が死亡し、14日間抗生物質を投与された患者の16.1%にあたる286人が死亡した (差-1.6ポイント[95.7%信頼区間{CI}、-4.0~0.8])し、非劣性マージン内であった。 割り当てられた期間よりも長い期間治療を受けたのは7日間投与群の23.1%、14日間投与群の10.7%であった。 7日間投与群の患者の23.1%、14日間投与群の患者の10.7%で、割り当てられた期間よりも長く治療が行われた。 per-protocol解析でも非劣性が示された(差、-2.0%ポイント[95% CI、-4.5~0.6%ポイント])。 これらの知見は、 副次評価項目および事前に定義された患者、病原体、症候群の特徴に基づくサブグループ全体で概ね一貫していた。
【結語】BSI患者の入院加療では、7日間の抗生物質治療は 14日間の治療と比較して非劣性であった。
当然いくつかのポイントがあります。
1)除外基準
これは上記にまとめたとおりで、免疫不全患者や人工物感染、長期治療を必要とする感染症、すでにバンドルが確立されている黄色ブドウ球菌やカンジダについては除外されており、今回の知見を適応することはできません。
また多施設共同研究ゆえの難しさですが、的確基準を満たした患者のうち7割程度がランダム化されませんでした。
2)感染症・病原体の内訳
4割程度が尿路感染症(≒急性腎盂腎炎、CAUTI)で6割程度がグラム陰性桿菌でしたが、
ちなみにICU/non-ICUそれぞれでもこれらの内訳に大きな差はなかったようです。
グラム陰性桿菌以外の菌血症を含むというのが本試験の特徴の一つです。サブグループ解析でもGPC/GNRで大きな差がなさそうではありますが、GPCの頻度は腸球菌(たぶん胆道感染症など)、CNS、肺炎球菌(次いで連鎖球菌)の順なので、確かに短期治療でも問題なさそうです。
3)COVID-19の影響
大半がコロナ禍にリクルートされたようです。
4)患者の重症度
多くが市中感染症であり、Day0のSOFAや人工呼吸器使用、カテコラミン使用率などからそれなりに重症例を含むコホートであることがわかります。ただ、7日目の死亡率は両群とも1%未満のようであり、非常に重篤な敗血症症例についてはそれほどリクルートされていない可能性があります。
5)治療薬と治療期間
治療としてもCTRXが最多だったようです(PIPC/TAZ、MEPM、CPFXがそれに次ぐ)が、これも両群間に大きな違いはありません。ICU/non-ICUでも大きな差はなかったです。併用ないしはスイッチとしてでしょうか、経口薬も使用されたようです。
本研究で最も重要な点は、短期治療群でも23.1%が7+2日を超えて治療が行われていた点です(逆に14日治療群でも5.8%が14日より短いのですが)。結果として治療期間の中央値は7日治療群が8日[7-11日]、14日治療群が14日[14-15]となっています。
治療期間の延長が行われた理由は不明ですが、重症例だったとか、二次感染を併発したとかいったことが想定されています。
その他、経口薬の使用率を見る限り、経口スイッチの結果少し長めに治療しているケースが多かったのではないかと想像します。
6)アウトカム
主要評価項目である90日全死亡については両群に差がなく、その他の副次評価項目の各項目、菌血症の再燃や有害事象、CDI、薬剤耐性菌の出現に至るまで両群に明らかな差はなく、サブグループ解析においてもこれといった気になる点は認めませんでした。
今回菌血症という多様な集団をみているため、臓器特異的なパラメータを確認できませんので、実際何日くらいで「良くなっていた」のかを知ることはできません。また持続菌血症を来す可能性のある病原体はほとんどいませんでしたので、菌血症の再発の有無についても差がないからなんだということも難しいですね。
以上をまとめると
○重症例やグラム陽性球菌を含む菌血症においても短期治療(約7日間)は14日間治療と比べて90日全死亡率において非劣性であることが示された
○ただし、除外基準や一部の症例で7日を超えて治療が行われていたことに注意
本研究結果から「菌血症=14日間治療」という常識は過去のものとなったのは確かですが、一律で短期治療を目指すべきなんてことは言えません。むしろ患者個別の背景や感染臓器パラメータなどに注目し、個別化を進めていく(その中で可能ならより短期治療を選択する)ことが重要でしょう。
7日間程度の治療が選択できる条件としては、以下を提案します(私見)。
1)患者背景(特に重度の免疫不全がないこと)
2)微生物と適切な抗菌薬投与
(黄色ブドウ球菌などではケアバンドルを遵守/必要十分な抗菌薬の量と選択)
3)ソースコントロールが適切に行われている(ドレナージ/デブリードマン、人工物がない・除去後)
4)経過が良いこと(感染臓器パラメータの改善、敗血症からの離脱)
上記の条件は経口薬へのスイッチを検討する条件としても適切かと思います。