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救急外来における超音波プローブの汚染

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Xで軽く紹介したら反響が大きかったので、まとめました。 やはりみなさん気にされているんですね。


【背景】超音波は救急外来において患者の評価と診断に頻繁に用いられている。体液や血液によるプローブ汚染のリスクがあるにもかかわらず、その汚染率は依然として不明である。
【目的】この研究は、病院の種類と再処理方法に焦点を当てて、救急部門における超音波プローブの細菌汚染を評価することを目的とした。
【方法】2023年に、大学病院、非学術系三次医療機関、および地域病院において多施設共同前向き観察研究を実施した。検体は救急外来患者に使用されたプローブから採取した。再処理方法としては、水で湿らせたワイプのみ、水で湿らせたワイプとエタノールワイプの併用、第四級アンモニウムワイプのみ、および第四級アンモニウムワイプとエタノールまたは次亜塩素酸塩ワイプの併用の4通りが用いられた。アウトカムは、各プローブの総表面積あたりのコロニー形成単位(CFU)で測定した細菌汚染レベルと、耐性菌株とした。
【結果】CFUの中央値は、大学病院では10(IQR:0-50)、非学術系三次医療機関では40(10-135)、地域病院では30(1-95)であった。再処理方法別に見ると、水湿らせたワイプのみではCFUの中央値は20(1-90)、水湿らせたワイプとエタノールワイプを追加した場合は10(0-20)、第四級アンモニウムワイプのみでは90(40-180)、第四級アンモニウムワイプとエタノールまたは次亜塩素酸塩ワイプを追加した場合は20(1-50)であった。プローブの18.2%で耐性菌株が検出された。
【結語】施設の種類や再処理方法に関係なく、救急救命室の超音波プローブでは耐性菌を含む高レベルの細菌汚染が観察されました。

最も頻繁に検出されるのは常在菌(表皮ブドウ球菌など)です。時にMRSAが検出されます。
超音波プローブの汚染については婦人科などの体腔エコーが特に問題となります。一般細菌だけでなく、クラミジアやHPVにより汚染されることが知られています。 一方、救急外来におけるエコープローブの汚染については質の高い研究が少ないです。
67%(111/164)で常在菌が、2例から臨床的に重要な病原体(MSSA、アシネトバクター)が検出された。 3段階の消毒(乾いたタオル、生理食塩水で湿らせたタオル、第四級アンモニウム殺菌ワイプ)で殺菌できた。
内科、外傷、小児科の各領域におけるプローブの清浄度は、それぞれ65%、33%、70%だった。
5つの救急部門と5つの集中治療室で使用されている超音波装置を調査。61%に血液の汚染、48%に微生物汚染あり。

また上記と比較すると、ドップラーエコーはいくらか汚染率が低いかもしれません(Eur J Vasc Endovasc Surg. 2002 )。
個人的にはNICUとかどうなっているか気になっています。

臨床的に問題となる菌が定着している可能性は低そうですが、MRSAの伝播やカテーテル関連血流感染症のリスクに繋がっている可能性はあります。CVカテーテルの挿入は通常滅菌プローブカバーを用いて行いますのでリスクは低いと思いますが、動脈ライン確保や穿刺困難例の末梢静脈カテーテルの確保時に感染リスクを生じる可能性はありそうです。特に確保困難な症例では何度も穿刺を試みますので...。

加えて問題なのは標準的な消毒方法がないことです。拭けばある程度菌が減るとする報告もあれば、第四級アンモニウムでも不十分とする報告もあります。アルコールはプローブによっては使用が推奨されておらず、劣化のリスクがあります。
慶応の佐々木先生のところではすでに臨床研究を行っておられます(Trophon study)ので、こちらの結果報告をまちつつ、わたしの施設でもエコーの汚染状況と感染対策について調査と介入を行うことにしました。何かしら結果が出たら、学会等で報告させていただきます。


まとめ
超音波プローブは結構汚染されている
臨床的に重要な病原体は少ないが、潜在的な感染リスクになっている可能性はある
適切な消毒方法はまだわからない

by vice_versa888 | 2025-04-28 20:53 | 感染制御 | Comments(0)

私見と自分の勉強のための備忘録です(感染症を中心に呼吸器および内科全般)。何か間違いがあればご指摘いただければ幸いです。臨床と研究、GeneralistとSpecialist、仕事と家庭、理想と現実。最適解がわからずいつも悩んでいますが、揺れ動く自分の立ち位置を確かめながら前進したいものです。


by vice_versa888