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成人発症免疫不全症候群(adult-onset immunodeficiency; AOID)

※本記事は「第100回日本結核・非結核性抗酸菌症学会学術講演会」において開催された
国際シンポジウム 「Toward the establishment of international guidelines for disseminated NTM disease caused by anti-IFN-γ neutralizing autoantibodies」を受けて、自分の勉強と頭の整理のためにまとめたものです。

○成人発症免疫不全症候群(adult-onset immunodeficiency; AOID)は、健常に経過してきた成人が特定のサイトカインを中和する自己抗体(anticytokine autoantibodies; ACAA)を後天的に獲得することにより、先天性免疫不全と極めて類似した易感染性を呈する疾患群です。
最も症例数の多い抗 IFN-γ 抗体(AIGA)のほか、抗 IL-6 抗体、抗 IL-23 抗体、抗 IL-12 抗体などが知られています。

0)各自己抗体のまとめ

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1)AIGAによる播種性NTM症
解説はリンク先がわかりやすいと思います。
【概要】
AMEDプロジェクト「抗インターフェロンガンマ自己抗体がもたらす成人発症免疫不全症における基盤情報の整備と疾患レジストリの構築」
産生された抗IFNγ中和抗体は、IFNγ–STAT1経路を遮断し、マクロファージの M1分化抑制・活性酸素産生低下を介して易感染性を生じます。
東・東南アジアに集中しており、特定の民族的傾向(HLAとの関連もあり)があるようです。
抗酸菌を代表とするいわゆる細胞内寄生菌や真菌、ヘルペスウイルスに対する播種性感染症や重複感染症を呈しますが、
最も特徴的なのは非結核性抗酸菌症(NTM)の播種性感染症です。
通常NTMの播種性感染症やHIVなど高度な細胞性免疫不全で認められますが、こうした背景がなく全身の臓器に播種性感染症を起こします。
臓器特異的な症状がなく、特に本邦では骨、肺、リンパ節・組織への播種が多いことから、初期診断は「悪性リンパ腫」や「悪性腫瘍の転移」であることが多いです。
組織・培養検査で悪性所見もないが、明らかな抗酸菌感染症を示唆するような所見もないことから診断に苦慮するケースが多いです。
本邦ではMAC(M.avium/intracellulare compex)が多いのですが、他の東南アジア地域ではM. abscessus complexがやや多いこともあります。
おそらく肺NTM症と同様に環境の違いが影響しているのでしょう。タイでは皮膚、リンパ節病変の割合が多いようです。
臨床像や予後の違いがこうした病原体の違いに基づくものだけなのかはわかりません。

【検査】
血清中の抗IFNγ中和抗体の存在(抗IFNγ抗体そのものは他の患者でも認められることがある)を証明する必要があり、中和能の評価が必要です。
希少疾患であることもあり、コマーシャルベースでの測定はなく、現在熊本大学(https://kumamoto-respir.com/inf-g-inspection-app)で行われています。
スクリーニングとしてIGRA(インターフェロンγ遊離試験)の中でもクオンティフェロン(QFT)が有用です。抗IFNγ中和抗体のため、測定を試みても陽性コントロールでもIFNγが産生されず、判定不能になります。同じIGRAのTSPOTと違い、全血検体を用いた検査であるため抗IFNγ中和抗体が含まれると言う点がミソですね。

【治療】
AIGA関連免疫不全症候群の治療は、まず長期にわたる適切な抗菌療法が第一選択となります。しかし、難治性や進行性の症例では、免疫調節療法が考慮されます。中和抗体の産生を抑制する目的でリツキシマブやダラツムマブ、ボルテゾミブといったB細胞を標的とした治療が検証されています。
一方、東南アジアなど諸地域では薬価の問題もあり上記が使用しにくいようで、シクロホスファミドによる代替治療も行われています。
まだ研究段階ですが、CAAR-T療法(アスペルギルスNoc2タンパク質に類似したIFN-γ変異体を用いて)も試みられています。

2)抗IL-6抗体
炎症性サイトカインの代表格であるIl-6の中和抗体であり、その下流に位置するCRPなどの産生が抑制されます。
好中球の動員が抑制されることによる易感染性そのものよりも、急性炎症が必要な場面でCRPが上昇しない=炎症の存在に気づきにくいということが主たる問題と考えます。黄色ブドウ球菌の感染(皮膚や関節)が問題になりますが、気が付かれないと血流感染を呈する可能性があります。真菌に対する感染防御は保たれるようです。
関節リウマチなどに投与される抗IL-6抗体製剤と同様の病態を呈すると考えられますので、肺炎などの細菌感染症が重症化する可能性はあります。
(IL-6についてはコロナ真っ只中で記事にしました:今だからこそ。IL-6を理解しよう)
基本、中和抗体の証明が必要(AIGA参照)ですが、「感染症なのにCRPが0」という場合に疑うことになります。とはいえ報告例は非常に少なく、私も1例だけ見たことがある程度です。

3)抗IL-12/IL-23抗体
IL-12/IL-23は樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞によって産生され、それぞれTh1、Th17細胞の増殖・維持に寄与します。この2つは共通のサブユニット(p40)を有しています。IL-12/IFNγ軸は抗酸菌感染症に対する免疫の要であり、IL-23もまた、IFNγの誘導に影響し、Th17系を中心に皮膚・粘膜の免疫防御に重要な役割を果たしています。
IL-23自己抗体(IL-12自己抗体は単独では易感染性に影響しないので)の特徴は2つあります。
胸腺腫と関連する:胸腺腫患者の侵襲性、重症感染症(特に重複感染や抗酸菌、真菌感染症)で疑う
・広範な細胞性免疫不全と関連する:抗酸菌や真菌などの播種性感染症(トキソプラズマを代表とする中枢神経感染症も特徴的)
イメージとしてはHIV/AIDS患者(CD4+ <100)の感染症と同様だと考えると良いでしょうか(これも慣れていないとピンとこないかもしれません)。
ここを標的としたIL-12/IL-23p40抗体製剤(ウステキブマブ)もありますが、TNFα製剤同様やはり重篤な感染症(しかも一般細菌〜抗酸菌、真菌、ウイルスまで幅広く)注意が必要です。
AIGA同様、B細胞を対象とした治療が有効である可能性があります。

4)抗IL-17(IL-22)抗体
粘膜や皮膚の防御、特に真菌(カンジダ)に対する免疫応答が障害され、「慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMC)」を呈する(重症・播種性感染症は稀)と覚えば良いです。
自己免疫性多内分泌腺症I型(APS-1)患者に高頻度で認められます。

5)抗GM-CSF抗体
抗GM-CSF自己抗体は自己免疫性肺胞蛋白症(aPAP)の病因として有名かつ重要です。
以前の記事でも紹介しました(抗GM-CSF自己抗体は非HIV感染クリプトコッカス髄膜脳炎の予後不良を予測する)。
マクロファージ機能低下により、ノカルジアとクリプトコッカスの感染、重症化に関連します(いずれも肺を侵入門口とし、中枢へ播種するところが類似しますね)。

まず滅多にお目にかかることはない症候群だと思いますが、かといって出会わないとは限らないので、
ざっくりと臨床像と誰に相談したら良いかと知っておくと良いと思います。

まずはガイドライン・ガイダンスの整備ですね。

【参考文献】
1. Immunol Med. 2025;48(2):124-140. レビュー文献です
3. Clin Infect Dis. 2018;66(8):1239–45. AIGAによる播種性NTM症の臨床像
4. J Clin Immunol. 2025;45(1):93.    AOID(AIGA)レビュー 東南アジアに多い
5. J Infect Chemother. 2014;20(1):52-6. AIGAの検出方法について
6. J Exp Med . 2022;219(9):e20212126. AIGAの機能、病態について
7. Clin Infect Dis. 2020;71(1):53-62. タイとアメリカのAIGA比較
8. J Immunol Res. 2018:2018:6473629. RTXの代替治療としてのIVCY
9. Sci Immunol. 2025;10(107):eadm8186. CAAR-T療法について
10. J Immunol. 2008;180(1):647-54. 抗IL-6自己抗体
11. N Engl J Med. 2024;390(12):1105-1117. 抗IL-23自己抗体

by vice_versa888 | 2025-06-08 14:28 | 感染症全般

私見と自分の勉強のための備忘録です(感染症を中心に呼吸器および内科全般)。何か間違いがあればご指摘いただければ幸いです。臨床と研究、GeneralistとSpecialist、仕事と家庭、理想と現実。最適解がわからずいつも悩んでいますが、揺れ動く自分の立ち位置を確かめながら前進したいものです。


by vice_versa888