Candida血症に対する抗真菌薬選択
2025年 10月 12日
ちなみにカンジダ菌血症の基本的なところは以前の記事(カンジダ菌血症でルーチンの眼科診察は不要?)にまとめていますのでご参照ください。
Vena A, Bartalucci C, Muccio M, et al. Comparative effectiveness of echinocandins and liposomal amphotericin B for fluconazole-resistant Candida parapsilosis bloodstream infections. Antimicrobial agents and chemotherapy. 2025:e0035525.
【方法】この後ろ向き観察研究は2018年1月から2022年12月にかけてイタリアの2施設で実施された。対象患者は、微生物学的に確認されたFLZR-CP BSIを有する成人(18歳以上)で、エキノキャンディン系薬剤またはL-AmBによる標的療法を受けた患者とした。患者は、年齢、Charlson合併症指数、敗血症または敗血症性ショックの有無、適切な抗真菌療法開始までの時間(診断から48時間以内または48時間超)、感染源に基づき2:1でマッチングした。
【結果】63例が対象となった(エキノキャンディン群42例、L-AmB群21例)。Cox回帰分析において、エキノキャンディンによる標的療法は死亡率上昇と関連しなかった(調整HR 1.40;95%信頼区間[CI] 0.33-5.92、P = 0.645)。感染源制御を受けなかった患者を含む探索的感度分析でも同様の結果が得られた(P = 0.491)。さらに、多変量回帰分析においても、エキノキャンディン治療は持続性真菌血症のリスク増加と関連しなかった(調整HR 1.61:95% CI 0.43-5.99、P = 0.476)。エキノキャンディン系薬剤とL-AmBは、FLZR-CP BSI患者において、30日死亡率および持続性真菌血症発生率が同等であった。
【結語】これらの知見は、エキノキャンディン系薬剤がフルコナゾール耐性株を有する患者においても、C. parapsilosis 血症に対する有効な治療選択肢であることを裏付けるものである。
Global guideline for the diagnosis and management of candidiasis: an initiative of the ECMM in cooperation with ISHAM and ASM
最も参照されるのはIDSAガイドラインですが、最新版が2016年とやや時間が経ってしまいました。
稀なものはOverview on the Infections Related to Rare Candida Speciesも参考に作成しています。
(AIの力も借りたので間違いがあれば教えてください)

だからといって特別治療失敗が多いとはいえないのですがデータが乏しいので、FLCZが使えない場合にどうするのが適切かという問いに答えようとしたのが今回の研究です。ちなみにこの研究で使用されたキャンディンの大半はカスポファンギンです。マッチしているとはいえ、エキノキャンディンの選択に対するバイアスは否定できません。また眼内炎の合併はほとんどなかったようです。
ただ、酵母様真菌はカンジダだけではありません。
クリプトコックス(Cryptococcus neoformans/gattii)、Trichosporon、Rhodotorula mucilaginosa、Malassezia furfur、Saprochaete/Magnusiomyces、Saccharomyces cerevisiae/boulardii、など比較的稀な真菌では、エキノキャンディンが無効です。上記のほとんどはAmB製剤±5-FC(Trichosporonはアゾールを選択)が第一選択になります。
(稀な酵母様真菌のガイドライン:Global guideline for the diagnosis and management of rare yeast infections: an initiative of the ECMM in cooperation with ISHAM and ASM)
多くはフルコナゾール(FLCZ)やボリコナゾール(VRCZ)を選択しますが、問題はその菌がアゾールに感性があるかどうかということになります。
ですので、1)早く菌を同定すること 2)眼内炎の有無をなるべく早く確認すること、が必要です。
以前の記事(カンジダ菌血症でルーチンの眼科診察は不要?、カンジダ症患者における眼カンジダ症のスクリーニング 診療を変える時期が来たか?)でも話題にしましたが、どんな患者にいつ眼科診察を行うかまだ明確なエビデンスはありません。上記の様に治療選択肢に影響するため早期に確認したい一方で、初回診察で異常がなくても後で眼内炎が明らかになることもしばしばあるため注意が必要です。
まとめ◯酵母様真菌血症の初回治療はエキノキャンディンでよいが、
稀な真菌の場合(=L-AmBを選択)もあるので注意
◯眼内炎の有無でアゾールを選択するかどうかが変わるので、眼科診察を積極的に依頼 できれば2回以上
